第3回 トラウマのER理論の詳細
( PTSD、トラウマの記憶を消すシリーズ)

2022年5月6日

MEG PTSD うつ病・メンタル トラウマ 鍼灸・ハリ

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脳のトラウマ記憶から作られる危機予測とそれに続く危機管理行動を理解する理論です。 トラウマの記憶を消して、PTSD症状を治す治療法を作り出す為の理論です。

PTSD,トラウマと言ったメンタル疾患に留まらず、脳で広く行われる予測活動を理解するための最初の一歩や叩き台を成りうる理論を目指しています。

ただし理論と治療法は私見で、仮説で検証中です。
今回のブルグ記事はトラウマのER理論の詳細です


目次 (連載記事のページ)

PTSD、トラウマの記憶を消すシリーズのページ

トラウマのER理論の全体像が分かる記事です。

トラウマの記憶は脳のどこにあるか、最新の脳画像で説明しています。
トラウマのER理論の前提となる科学情報です。

トラウマのER理論が詳しく説明されています。

具体的にトラウマの記憶を消す為のセルフケアの運動法です。



トラの写真
りんもん氏撮影のトラ(北海道旭川市)フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)



トラウマのER理論の重要ポイント

最初に全体像を理解する為に理論の概要を説明します。 前回ブルグ記事からの引用になります。
厳密さよりも分かり易さを優先してシンプルに説明すると

トラウマの記憶が危機の予測活動に使われる。
その予測活動が正常に完結するとトラウマの記憶は消える。PTSDが治る。

その概要から少しだけ詳しく説明をすると次の5点が重要なポイントになります。

5つの重要点

1つ目:脳が行う将来予測
PTSD、トラウマの記憶は、広く言えばメンタル疾患は、脳が作る危機予測で作られる。予測には過去の経験の記憶が使われる。トラウマの記憶も過去の経験記憶の一つである。

2つ目:脳と身体の危機予測活動
脳と身体の器官が協調して危機予測活動を行う。
予測活動とは、危機予測、行動準備、実行動、結果、脳への結果のフィードバックです。

3つ目:予測活動が正常に完結
連続する予測活動が正常に完結すると、過去の危機の記憶は消える。
正常に完結することの意味は「生き残りができた」と判断されます。 

4つ目:トラウマの記憶は右脳後頭部の視覚野に記憶される
トラウマの記憶は右脳後頭部の視覚野とその周囲に記憶される。
視覚情報以外も視覚情報に変換されて視覚野に記憶される。

5つ目:予測行動には錐体外路が関わる
トラウマが作る予測行動には錐体外路の神経網が強く関わっている。
症状は同側の右側にでる。


次にこの5つの重要ポイントを更に詳しく説明します。

1)脳が行う将来予測

人は生物としての危機を避け、生存を確保する為に常に予測の脳活動を行っている。 これがER理論の出発点となります。脳の予測活動を重視しています。

これまでの経験が脳内に記憶として残っています。 その記憶と五感で得た観測データと使って予測をします。 過去の経験の記憶が予測に使われる。 当然トラウマの記憶も予測に使われます。 


2)脳と身体の危機予測活動を行う。

予測活動とは、危機予測、行動準備、実行動、結果、脳への結果のフィードバックです

もし危機が迫っていると予測した場合は、危機に対応する為の準備行動を行います。
身体の器官に準備行動を伝えます。 交感神経を優位にして、副交感神経を低下させます。
筋肉に対しては筋収縮をさせて、内臓は活動を低下させ、心臓は心拍数を上げます。
逃走か闘争の準備です。


3)予測活動が正常に完結

上の2)の危機準備の次は、実際に逃走か闘争の行動をします。

これによって準備行動として蓄えられたエネルギーは解放され、消費されます。
生き残ったと脳は判断します。 危機は去りました。

危機を乗り越えたことになり、トラウマの負の記憶から生の成功体験に切り替わる。
トラウマの記憶は、危機の情報ではなく、危機予測の重要情報でもない。
脳に強い保存状態に留める必要がない。
脳は不用になったトラウマの情報を破棄する。消し去る。



4)トラウマの記憶は右脳後頭部の視覚野に記憶される

トラウマの記憶は右脳後頭部の視覚野とその周囲に記憶される。
私見ですが、トラウマが生まれた時の情動の記憶も画像に変換されて画像情報として記憶されるようです。 脳科学の研究と臨床の観測結果からそのように考えるのが妥当と考えています。 

臨床の観察結果から得た事

トラウマの記憶は右脳後頭部の視覚野とその周囲に記憶される。 
臨床での観察結果からもそのように考えるようになりました。 
その理由をこれから説明します。

一人でなく多くのトラウマを抱える患者さんが施術中に右の後頭部を指さして痛くなると言われます。 その場所は右脳後頭部の視覚野に一致します。

低周波音過敏症

低周波音過敏症の患者さんの例でも、同じ右の後頭部(視覚野当たり)が痛くなると訴えられます。 

低周波音過敏症の患者さんが感じる低周波音は、一日中、どこの場所でも発生しています。 それで治療中でも強い低周波音を感じて症状が生じること普通にあります。 

逆に言えば低周波音と身体の変異の場所との関係性を明らかにし易い病気ともいえます。

低周波音過敏症の患者さんで分かったことは、音である聴覚の知覚過敏なので、過剰興奮するなら脳の聴覚野になるはずです。 しかし強い低周波音を感じた時に痛くなるのは右脳の視覚野の位置です。

なぜが強い低周波音で視覚野の過剰興奮になるか?

なぜが強い低周波音を聞いた時に、脳の聴覚野でなく視覚野の頭の位置で痛みがでるか?」

不思議に感じて調べました。
文献を調べても当然、そのような事例はなく、類似する答えもありません。

ネット検索を続けていくうちに次のような内容で合いました。

視覚情報だけでなく聴覚(音)、触覚(体性感覚野)、臭覚情報によりイメージ(映像化)情報を視覚野で作り出すと推測されています。

Akira Magazineの後頭葉の説明からの引用
https://www.akira3132.info/cerebral_cortex.html

上の引用文章は、聴覚(音)、触覚(体性感覚野)、臭覚情報が画像データに変換されて記憶されると言っています。

右脳に記憶されるトラウマの情報は断片化した情報として知られています。 それで外的、内的な極めて大きな危機の陥った時に五感で得た周囲情報が画像データに変換されて、正に断片化した情報として記憶される。

画像データを情報量の視点で見ると、画像データは少ない容量で多くの情報量を収めることができます。 限られた脳の記憶スペースを考えると、画像変換して危機発生時の周囲環境を画像として記憶することが理に適っています。


より詳しい脳のトラウマの記憶の説明

前回のブログ記事でトラウマの記憶の場所の節で説明しています。
PTSDの論文から、退役軍人の脳画像で説明しています。
そちらもご覧下さい。



5)予測行動には錐体外路が関わる

トラウマの情報は右脳の視覚野に記憶される。それは分かりましたが、次に新しい疑問が生まれました。

今までの私の固定概念では、
脳が伝える運動神経は途中の神経網の中で交差しているので、反対側に作用します。脳の右の障害は身体の左にでます。 脳に感覚を伝える経路の感覚神経でも同じで反対側になります。 

しかし実際は違うのです。

なぜ右脳のトラウマの症状が身体の右側にでるのか?

右脳の視覚野のトラウマの情報に起因する身体症状が右側にでます。
同側に症状がでます

その症状は強い筋収縮です。 コリともいえます。最初に右肩甲骨の上部や右肩甲骨上に現れます。 そこから首などのコリに波及します。 

今までは薄々感じていたことが、低周波音の過敏症の患者さんで目の前の症状として観察できました。 

その答えは旭川大学の高草木 薫先生の論文の「脳皮質・脳幹ー脊髄による姿勢と歩行の制御機構」からヒントを貰いました。 

下図の内側運動制御系は脳幹から同側に太い神経ラインがあります。それから分かることは歩行時の微妙な姿勢制御は同側を制御する。*1) 

ある資料(どの資料が忘れました、調べても再度見つけることはできませんで、曖昧ですが、)によると95%が同側に作用し、5%は反対側に作用する。

更に広く解釈すると姿勢制御はフィードバックを貰ったリアルタイムの脳が行う予測活動と言えます。

トラウマの記憶を使って危機の予測活動を行うことを同様に脳活動の一形態と考えることができます。

更に、錐体外路は解剖・生理学的には存在しないことが分かっています。 それで錐体外路とは予測動作を行う神経網の概念である。 *2)

歩行制御もメンタルの危機予測も脳の中で同じような取り扱いができる可能性があるということになります。脳科学の概念が広がったことになります。

何のことを言っているか分かり難いと思います。 

錐体外路をシンプルに言うと

錐体外路は、歩行や危機の予測活動に使われる神経網である。
その予測活動は同側の身体に現れる。 しかし錐体外路は実在はしない概念的なものである。

予測動作と聞けば錐体外路で、身体の同側に変化が現れる。
トラウマ記憶が作る危機予測で身体が固まるのは右が多い。
 

歩行制御の内側運動制御系と外側運動制御系
Fig.2 歩行の制御:内側運動制御系と外側運動制御系
大脳皮質・脳幹ー脊髄による姿勢と歩行の制御機構
高草木 薫先生の論文よりの抜粋




脳梗塞後遺症の錐体外路症状をトラウマのER理論で解釈する

ここからは、仮説の仮説です。

歩行時の予測

トラウマのER理論では、PTSDは脳がトラウマの記憶を元に作る危機予測である。 その脳で行われる予測活動をされに広く考えてみる。

例えば歩行で考えてみる。 歩行には多くの歩行に関わる筋肉が協調する動作予測と見ることができる。 そこには錐体外路が関わっている。 PTSD,トラウマも錐体外路で同じく、大枠では予測動作である。


脳梗塞で倒れた当時の記憶がトラウマの記憶になる

脳梗塞の後遺症は鉛管動作、歯車動作、痙縮とあるが、いずれも錐体外路障害と区分けされている。 

いままで話の流れで錐体外路は予測動作に関わることが分かっています。
それで脳梗塞の後遺症とはある種の予測動作に関わる症状と見なせることもできる。

そうなると脳梗塞が起こって倒れた時に、身体は本当に命の危険を感じた。
それで当時の危機の身体状態をトラウマ記憶として脳の記憶したと見なせることもできる。

すると動作毎にそれが脳梗塞のトラウマ記憶がフラッシュバックして、当時の脳梗塞で倒れた状態が再現される。 要するに鉛管動作、歯車動作、痙縮が繰り返さる。

従来の考えをブレークスルーする

脳梗塞により脳が広範囲に損傷して、それが後遺症を作りだしているという従来の考えは十分に分かる。 しかし脳には、代償作用や脳細胞時自体の再生能力があることが分かって来ています。 

その能力があるに関わらず、脳梗塞の後遺症からの回復は、満足いくものでない。

その現状をブレークスルーするには、トラウマのER理論を使い、脳梗塞のトラウマ記憶を消す。というアプローチも検討に値すると考える。 

これは今後の検討課題として継続的に調べていく。 


トラウマを理解する上で参考となる私の過去記事


★第3回  右脳のトラウマの記憶
https://kiraracare.com/ptsd3.shtml

★第4回 PTSDに在るということは
https://kiraracare.com/ptsd4.shtml



参照資料

1)大脳皮質・脳幹ー脊髄による姿勢と歩行の制御機構        2013年
高草木 薫先生
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/3/27_208/_pdf

2)人体用語事典 錐体路/錐体外路 2010/10
坂井 建雄先生
https://imidas.jp/genre/detail/F-135-0222.html
神経回路網の研究によれば、大脳基底核からの出力の大部分は視床を経て大脳皮質に戻る。したがって錐体外路症状の基礎となる錐体外路は、解剖・生理学的には存在せず、大脳基底核の病変による症状は実は錐体路を通じて発現されていると考えられる。


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徹底的に調べて更に自分で考える事が好きです。それを続けていると脳や人の本質に関わるメンタル疾患の治療も得意に成りました。

今はSF小説三体に刺激を受けて量子力学、物理に関心があります。 その知識がいつか治療に繋がればと淡い期待があります。

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